豊中市役所
当社が本社を置く豊中市。近年の住みたい街ランキングでは常に上位にランクされる、人口40万人を超える中核市です。今回の企業トップインタビューは豊中市長・長内繁樹様。市役所という組織の長として、組織マネジメントにフォーカスしてお話を伺いました。
私たちネッツトヨタニューリー北大阪株式会社は1961年の創業以来、 「自分の子供を入れたくなる会社になる」「世代を超えて100年続く」という2つのゴールを掲げ、社員にとって幸せな職場になることを一貫して目指してまいりました。 このコーナーでは従業員を大切に経営されている企業トップにインタビューさせていただき、社員価値の高い企業づくりについて学びます。 真のお客様価値は幸せに働く社員によって生み出される、が私たちの信念です。記事を通して私たちの目指すゴールを多くの方に知って頂ければ幸いです。
ネッツトヨタニューリー北大阪株式会社
代表取締役社長 小西 敏仁
市役所に入所した経緯
──本日はありがとうございます。最初のご質問なのですが、長内市長は市役所に職員として入所されて以来約40年になりますね。市役所に入所される前は一般企業に入社されていたのでしょうか。
長内:私は大学卒業後、新入社員として金融機関に入社しました。私の父は東北から東京に出てきて大手の保険会社に勤めた人です。私が若い時分はそういう就職をすることが立身出世のストーリーだ、みたいな空気が世の中にはあって私も漠然とサラリーマンになるんだろうな、と思っていました。
また、私は関西学院大学出身なのですが、公民でいえば、民のほうに力を伸ばすというような学風でもあったように思います。当時、市役所の職員になる卒業生はほとんどいませんでしたし、役所勤めは就職の選択肢にはありませんでした。
また、私は関西学院大学出身なのですが、公民でいえば、民のほうに力を伸ばすというような学風でもあったように思います。当時、市役所の職員になる卒業生はほとんどいませんでしたし、役所勤めは就職の選択肢にはありませんでした。
──それで金融の世界に飛び込まれたのですね。どのような仕事をされたのですか?
長内:当座預金も出納もやったのですが、いちばん長かったのは融資でした。
融資をしていると社会のことが分かります。右肩上がり一直線の方もいらっしゃるし、困難な状況の方もいらっしゃいます。例えば、経営が苦しい会社は商業手形を切って、それを割引いて買い取らせて運転資金に回すんです。もちろん倒産も目の当たりにして人の生活が一変する場面を目の当たりにしました。毎日の日常が、こんなに変わることがあるのか、と思いました。
しかし、本当に困っている人を助けられるのかというと、そうではありません。民間企業なので数字目標もありますし、回収できる相手に融資をしなければいけません。数字に汲々としながら相手の経営能力を見定める仕事をする中で、自分は誰の役に立っているのだろうと疑問が湧いてきて悶々とする日が続きました。もっと困っている人の生活に密着したい。社会の役に立つ仕事がしたい、と思うようになっていました。
そこで思い出したのが大学時代にゼミで学んだ財政学です。「財産を税金という形で再配分することは、身近な人を助けるためなんだ」という一番根本的なことに社会に出て初めて気づいたのです。それで困っている人の生活に密着している地方公共団体に行きたいなという思いに至りました。当時は北摂7市の共同採用試験がありましたので、通勤時間に勉強して公務員試験を受けました。
融資をしていると社会のことが分かります。右肩上がり一直線の方もいらっしゃるし、困難な状況の方もいらっしゃいます。例えば、経営が苦しい会社は商業手形を切って、それを割引いて買い取らせて運転資金に回すんです。もちろん倒産も目の当たりにして人の生活が一変する場面を目の当たりにしました。毎日の日常が、こんなに変わることがあるのか、と思いました。
しかし、本当に困っている人を助けられるのかというと、そうではありません。民間企業なので数字目標もありますし、回収できる相手に融資をしなければいけません。数字に汲々としながら相手の経営能力を見定める仕事をする中で、自分は誰の役に立っているのだろうと疑問が湧いてきて悶々とする日が続きました。もっと困っている人の生活に密着したい。社会の役に立つ仕事がしたい、と思うようになっていました。
そこで思い出したのが大学時代にゼミで学んだ財政学です。「財産を税金という形で再配分することは、身近な人を助けるためなんだ」という一番根本的なことに社会に出て初めて気づいたのです。それで困っている人の生活に密着している地方公共団体に行きたいなという思いに至りました。当時は北摂7市の共同採用試験がありましたので、通勤時間に勉強して公務員試験を受けました。
社会で一番弱い立場にいる方々を守る
──困っている人に寄り添う事が、市役所に入所された動機だったのですね。
長内:そういう大義の為に一度決めた道の尻を割ったとも言えますが(笑)、今でも「社会で一番弱い立場にいる方々に、生活、くらしの中でいかに権利を守ることができるか」ということが一番大切にしている事です。
──40年以上市役所におられますが、入所当時はどのような市役所だったのですか?
長内:そうですね。全く違います。市役所に入った当時、朝は職場に早く行ってタバコの吸殻を片付け、先輩や上司の机の上を拭いてお茶の用意をするところから始まりました。時間外労働なんか当たり前、いかに長く職場にいるかを競い合ったような時代でした。今では考えられません。
──今とは全く違う価値観ですね。
長内:そうですね(笑)
昔は職場が家族の次に大切なコミュニティーとしてウェイトを占めていましたが、今は家族の次に大切なコミュニティーは必ずしも職場ではありません。職場旅行が楽しみな時代もありましたが、今の若い職員は当時と同じ価値観ではありません。
そこに一つの組織経営のポイントがあると思います。私は昔の市役所で育ちましたが今でも現役ですから、職員の価値観に合わせて自分の価値観もアップデートしていかなければいけません。「社会で一番弱い立場にいる方々の、生活、くらしの中での権利をいかに守るか」という軸がブレないようにすることと同時に、職員の価値観の変化に基づいてマネジメントをアップデートすることが重要です。市民ニーズも同じように変化します。
40万市民の首長として、すべての市民ニーズに合わせることはどうしても不可能です。その時々のニーズを集約した上で、中心軸を見定める。そしてそれに見合う施策をつくることが私に求められていることだと思います。ここは民間企業さんと同様ですね。
昔は職場が家族の次に大切なコミュニティーとしてウェイトを占めていましたが、今は家族の次に大切なコミュニティーは必ずしも職場ではありません。職場旅行が楽しみな時代もありましたが、今の若い職員は当時と同じ価値観ではありません。
そこに一つの組織経営のポイントがあると思います。私は昔の市役所で育ちましたが今でも現役ですから、職員の価値観に合わせて自分の価値観もアップデートしていかなければいけません。「社会で一番弱い立場にいる方々の、生活、くらしの中での権利をいかに守るか」という軸がブレないようにすることと同時に、職員の価値観の変化に基づいてマネジメントをアップデートすることが重要です。市民ニーズも同じように変化します。
40万市民の首長として、すべての市民ニーズに合わせることはどうしても不可能です。その時々のニーズを集約した上で、中心軸を見定める。そしてそれに見合う施策をつくることが私に求められていることだと思います。ここは民間企業さんと同様ですね。
大きなチームをつくる
──大切にする軸を持ちながら、ニーズの中心軸を見極める、非常に示唆に富んだお話ですね。具体的に市役所ではどのような仕事をしてこられたのですか?
長内:最初に入ったのは職員課、職員の福利厚生を扱う部署でした。その後秘書課を経て、保険、国民年金といった窓口業務に携わり、平成8年に私の本業ともいえる福祉部門に異動となります。
介護保険制度に備えて、介護保険に関する人材を集めて統括していた部門です。高齢福祉、地域福祉、そして健康福祉の部長職を経て、平成26年に副市長、そして平成30年に市長とならせていただきました。
介護保険制度に備えて、介護保険に関する人材を集めて統括していた部門です。高齢福祉、地域福祉、そして健康福祉の部長職を経て、平成26年に副市長、そして平成30年に市長とならせていただきました。
──この世界に入ってこられた目的「社会で一番弱い立場にいる方々の権利を守る」ことを実現できる部門に長くおられたのですね。実際に仕事をされてどのようなことを感じましたか?
長内:民間の力を借りることの大切さです。
旧来福祉といえば、市役所が市民ニーズを吸い上げて、公共財を配分するという「措置」の時代が長く続きました。しかし、私が福祉の世界に踏み入れたころから、福祉サービスが行政を介さずに利用者とサービス業者との契約でサービスが利用されるようになっていきました。
私の仕事は民間のサービスをうまく使える土壌を作ることが目的でした。希望者に対して、公的なサービスと民間のサービスの両方のメリットをしっかり示して、利用者さんのサービスの質が上がるようにしていきます。役所だけが公共財を使うのではなく、民間が公共財を使えるようになることで、利用者に対するサービス品質はぐんぐん伸びていきました。自分の人生においてすごく価値ある仕事ができたと思っています。
旧来福祉といえば、市役所が市民ニーズを吸い上げて、公共財を配分するという「措置」の時代が長く続きました。しかし、私が福祉の世界に踏み入れたころから、福祉サービスが行政を介さずに利用者とサービス業者との契約でサービスが利用されるようになっていきました。
私の仕事は民間のサービスをうまく使える土壌を作ることが目的でした。希望者に対して、公的なサービスと民間のサービスの両方のメリットをしっかり示して、利用者さんのサービスの質が上がるようにしていきます。役所だけが公共財を使うのではなく、民間が公共財を使えるようになることで、利用者に対するサービス品質はぐんぐん伸びていきました。自分の人生においてすごく価値ある仕事ができたと思っています。
──民間企業に任せることでサービスの品質はどのように変化していったのでしょう?
長内:役所が介在した場合は、サービスの良し悪しに関わらず公的価格が適用されます。
一方で役所が介在せず、民間の事業者さんがサービスを担うことになると、純粋にサービス品質によって介護サービスが選ばれるようになります。行政は何をするのかというと、サービスを底上げするためにしっかりと税金をかけていきます。役所がいい事業者さんを育成すれば、悪い業者さんが入ってきてもすぐに撤退を余儀なくされる、そういった市場環境になっていきます。結果として役所が単体で福祉サービスをしてきた時代に比べて利用者本位で品質が高いサービスが実現できるのです。
例えば昔は、役所が提供する福祉サービスは、職員が利用調整をするので平日の定時でサービスが終了してしまいます。それが民間の事業者さんがサービス提供をするようになれば、朝8時から夜8時までになったり、夜間の対応ができるようになったり、土日もサービスが提供できるようになります。厳しい市場にさらされることで、民間業者さんは知恵を絞ってサービスをより利用しやすく洗練させていきます。公から民にサービスの体系がシフトしていくことによって、そんな状況がどんどん実現されていくことにワクワクしました。
一方で役所が介在せず、民間の事業者さんがサービスを担うことになると、純粋にサービス品質によって介護サービスが選ばれるようになります。行政は何をするのかというと、サービスを底上げするためにしっかりと税金をかけていきます。役所がいい事業者さんを育成すれば、悪い業者さんが入ってきてもすぐに撤退を余儀なくされる、そういった市場環境になっていきます。結果として役所が単体で福祉サービスをしてきた時代に比べて利用者本位で品質が高いサービスが実現できるのです。
例えば昔は、役所が提供する福祉サービスは、職員が利用調整をするので平日の定時でサービスが終了してしまいます。それが民間の事業者さんがサービス提供をするようになれば、朝8時から夜8時までになったり、夜間の対応ができるようになったり、土日もサービスが提供できるようになります。厳しい市場にさらされることで、民間業者さんは知恵を絞ってサービスをより利用しやすく洗練させていきます。公から民にサービスの体系がシフトしていくことによって、そんな状況がどんどん実現されていくことにワクワクしました。
──なるほど、民間と協業することでサービスの品質が大きく改善したのですね。このような変化が起こってきたきっかけは何だったのでしょう
長内:私が最初に民間との協業が重要だと感じたのは阪神淡路大震災です。震災で豊中も大阪の中ではいちばん大きな被害を受けたのですが、その立ち直りの過程で行政が貢献できたことは、国や府の補助金、仮設住宅の確保など非常に限定的でした。
役所には「被災を受けた人全員に広く平等に」という論理があります。しかし、このような大災害のときには「誰にも平等に」という役所の論理ではできることが限られます。本当に困っている人に重点化することが必要です。
そんな中、民間のボランティアの方々は「ただちに」困っている人のところに「優先的に」物品を提供しておられました。こういうことは役所ではなかなか許されませんが、非常時には重要な考え方です。こういった支援が民間の力で迅速に実行されたことに大きな気づきがありました。行政には隙間があるので民間の力に頼ってそれを埋めていくという考え方が重要です。
役所には「被災を受けた人全員に広く平等に」という論理があります。しかし、このような大災害のときには「誰にも平等に」という役所の論理ではできることが限られます。本当に困っている人に重点化することが必要です。
そんな中、民間のボランティアの方々は「ただちに」困っている人のところに「優先的に」物品を提供しておられました。こういうことは役所ではなかなか許されませんが、非常時には重要な考え方です。こういった支援が民間の力で迅速に実行されたことに大きな気づきがありました。行政には隙間があるので民間の力に頼ってそれを埋めていくという考え方が重要です。
──役所だけではできないことでも、協力者の民間団体までをチームと考えると出来ることが多くありそうです。サービスの幅が広がりますね。
長内:そうです。これは日常的な行政すべてに当てはまることです。今、市民の皆様のニーズは幅が広く、深くなっています。ニーズにこたえるにはより知恵や経験、技術が必要です。一つの公共サービスを役所だけで担うということではなく、共感してくれる民間法人や民間事業者、ボランティアさん、あるいは研究者の方々とチームになることでもっと快適で満足度が高いサービスが提供できると思います。
ICTで時間をつくる
──そのような仕事の仕方なら、「全員に広く平等に」という役所の論理に捉われず、様々なニーズを拾い上げられそうですね
長内:はい。職員に常々言っていることは「どんどん外へ目を向けて地域に出かけるようにしてくれ」ということ。
そのために今、ICTの活用を重視しています。ICTを活用すれば人の手が空きます。手が空いた時間を使って、どんどん外へ出て、ニーズ把握や市民のみなさんの話を聞く、そういう形で職員に働き方を変えてもらいたい。本当に困っている人の中には役所に出向くことができない方も多くいらっしゃいます。そういう方には実際にお伺いして、困窮の状況や要望を確認する、そんな仕事ができるようになればいいと思います。
これまでは、住民票、印鑑証明、マイナンバー、それに付随する業務もすべて市役所の窓口で行う、来てもらうことが前提の市役所でしたが、すべての市役所業務を令和4年度の末までに、ほぼ100%オンラインで手続きができるようにするべく、今進めています。
そのために今、ICTの活用を重視しています。ICTを活用すれば人の手が空きます。手が空いた時間を使って、どんどん外へ出て、ニーズ把握や市民のみなさんの話を聞く、そういう形で職員に働き方を変えてもらいたい。本当に困っている人の中には役所に出向くことができない方も多くいらっしゃいます。そういう方には実際にお伺いして、困窮の状況や要望を確認する、そんな仕事ができるようになればいいと思います。
これまでは、住民票、印鑑証明、マイナンバー、それに付随する業務もすべて市役所の窓口で行う、来てもらうことが前提の市役所でしたが、すべての市役所業務を令和4年度の末までに、ほぼ100%オンラインで手続きができるようにするべく、今進めています。
仕事の仕方を変えていくための、組織への関わり方
──それは大きな変化ですね。仕事の形を変える時、現場の皆さんは反対しませんか?
長内:今までみたいに内部事務専門の正職員はいりません。
内部事務は短時間で勤務していただける職員の方々で対応してもらい、正職員はどんどん外に出ていかなければいけません。そのような組織に変革していきたいと思っています。このような大きな仕事の仕方を変化させる場合はトップダウンが非常に重要です。市民視点で仕事の仕方を変えるのは私の仕事だと思っています。
外にどんどん出ていく市役所に、本当に変えなければいけないのは意識です。だから市役所の統括者として、一つ一つの施策や方針の意義、「何のために」を職員に理解してもらうことは非常に重要なので、職員への発信を大切にしているつもりです。
内部事務は短時間で勤務していただける職員の方々で対応してもらい、正職員はどんどん外に出ていかなければいけません。そのような組織に変革していきたいと思っています。このような大きな仕事の仕方を変化させる場合はトップダウンが非常に重要です。市民視点で仕事の仕方を変えるのは私の仕事だと思っています。
外にどんどん出ていく市役所に、本当に変えなければいけないのは意識です。だから市役所の統括者として、一つ一つの施策や方針の意義、「何のために」を職員に理解してもらうことは非常に重要なので、職員への発信を大切にしているつもりです。
──意図を自分の言葉で説明するのは大切ですね。他に組織経営で意識されていることはありますか?
長内:冒頭で申し上げたように、今や「家族の次は職場」の世界ではありません。だから方針と意味を伝えただけでは組織は動いてくれません。組織を動かすのは「しくみ」と「気持ちでつながること」の2つが大切です。
しくみについてですが、市長の経営方針とか政策目標のもとに、所属する部門が一年間の組織目標を掲げて、具体的な目標を共有しています。組織目標を所属長が個人の目標と紐づけて設定し、毎年、目標設定時と中間進捗、到達具合を面談で確認して人事評価しています。それを我々がしっかりとチェックする体制ができています。
また、しくみだけで人の気持ちは動きませんので、目に見えない関係性もとても重要だと思います。普段から職場長は「私はちゃんとあなたのことを見てるねんで」「しんどい時は、いつでも言ってきてね」というメッセージを言葉や態度で送ることが大切です。困ったときには何か言ってきてくれるような、そんな関係性は意識していないとつくることができないと思います。
しくみについてですが、市長の経営方針とか政策目標のもとに、所属する部門が一年間の組織目標を掲げて、具体的な目標を共有しています。組織目標を所属長が個人の目標と紐づけて設定し、毎年、目標設定時と中間進捗、到達具合を面談で確認して人事評価しています。それを我々がしっかりとチェックする体制ができています。
また、しくみだけで人の気持ちは動きませんので、目に見えない関係性もとても重要だと思います。普段から職場長は「私はちゃんとあなたのことを見てるねんで」「しんどい時は、いつでも言ってきてね」というメッセージを言葉や態度で送ることが大切です。困ったときには何か言ってきてくれるような、そんな関係性は意識していないとつくることができないと思います。
昔の成功体験は役に立たない
──トップが説明責任を果たすことだけでなく、職場の目的と職員の気持ちをつなぐ為に、しくみと人間的な関係性、この2つを重視しておられるのですね。それは私たちの組織運営にも共通します。今の若い職員の方々と、長内市長や職場長の年齢はかなり離れていると思いますが、価値観のギャップを感じることはありませんか?
長内:ありますね。昔は、踏ん切りをつけてさっさと帰る、なんてできませんでした。私自身、体調がよっぽど悪いときしか帰れなかったし、そんな時も部長から帰れ、とはなかなか言ってもらえませんでした。しかしこういう価値観を今の人に押し付けても共感してもらえることはありません。
だから、自分には「しんどいことが当たり前の働き方」という経験のベースがある、と認識することが大事だと思います。自分の価値観が絶対な訳はありません。自分の価値観の癖のようなものを認識することで、今の働く世代の人の価値観に対して譲ったり、近づくことができます。
若い世代に仕事を通じて満足感を感じてもらい、長く続けてもらうには、時代が違う自分の成功体験を言って聞かせても、プラスにはなりません。逆に今の人の働き方に上司の側が合わせる。今どきの働く人の価値観とライフスタイルに寄り添うことが大切です。例えばお子さんができたような場合は、男性も女性もどちらも育休を取得していただいたり、ワークライフバランスを大切にしていただきたいです。
ただ一方では公務員の使命感だったり、何のために誰のために働くのか、そして職場が目指す究極の目標については世代に関係なく一緒に目指してもらいたい。そこは、職場長は職員と手を携えて、背中を押してあげる、そんな心が必要だと思います。
だから、自分には「しんどいことが当たり前の働き方」という経験のベースがある、と認識することが大事だと思います。自分の価値観が絶対な訳はありません。自分の価値観の癖のようなものを認識することで、今の働く世代の人の価値観に対して譲ったり、近づくことができます。
若い世代に仕事を通じて満足感を感じてもらい、長く続けてもらうには、時代が違う自分の成功体験を言って聞かせても、プラスにはなりません。逆に今の人の働き方に上司の側が合わせる。今どきの働く人の価値観とライフスタイルに寄り添うことが大切です。例えばお子さんができたような場合は、男性も女性もどちらも育休を取得していただいたり、ワークライフバランスを大切にしていただきたいです。
ただ一方では公務員の使命感だったり、何のために誰のために働くのか、そして職場が目指す究極の目標については世代に関係なく一緒に目指してもらいたい。そこは、職場長は職員と手を携えて、背中を押してあげる、そんな心が必要だと思います。
──気持ちを一つにするには、目的だけでなく目標を共有することも重要だと思います。市役所の皆さんが共通して目指している目標はあるのでしょうか?
長内:部門が毎年成果目標を設定しているのですが、正直それだけでは私たちが目的に近づけているのか、なかなかわからない部分はありますね。
いちばん我々の励みになる指標は何かというと、都市経営部が2年に一度行う市民8千人対象の無作為アンケート調査です。自己評価でなくて市民の方から直接得られる評価ということで励みになりますね。
こちらは具体性に欠ける部分があるので部門目標も並行して活用しています。この2つの目標を確認することが私たちの仕事が本当に市民に役に立っているのかを知る上でとても大切です。
令和3年の実施調査でいえば、コロナ禍にも関わらず、医療関係あるいは保険に関する評価がぐんと上がったり、豊中が安全・安心という点でイメージが上がりました。これは、行政と民間企業が一緒になって作り上げてきた成果だとつくづく感じています。たくさんのお医者さんが豊中市内に根を張ってくださっているお陰でもあります。
いちばん我々の励みになる指標は何かというと、都市経営部が2年に一度行う市民8千人対象の無作為アンケート調査です。自己評価でなくて市民の方から直接得られる評価ということで励みになりますね。
こちらは具体性に欠ける部分があるので部門目標も並行して活用しています。この2つの目標を確認することが私たちの仕事が本当に市民に役に立っているのかを知る上でとても大切です。
令和3年の実施調査でいえば、コロナ禍にも関わらず、医療関係あるいは保険に関する評価がぐんと上がったり、豊中が安全・安心という点でイメージが上がりました。これは、行政と民間企業が一緒になって作り上げてきた成果だとつくづく感じています。たくさんのお医者さんが豊中市内に根を張ってくださっているお陰でもあります。
──それはうれしい評価ですね。逆にここまでのキャリアの中で一番つらかったことは何ですか?
長内:・・・・私の人生の中で今が一番しんどい時ですね。もっとしんどい思いをされている方がおられる中で申し訳ないのですが。
今まで、コロナの第一波から第五波までは「感染者数が増えてきたから動きを止めよう」とお願いしてきましたので、やることが明確でした。しかし、今は感染者数がどんどん増えてくる一方で、社会・経済を動かしていかなければならないというフェーズに入っています。自然としんどい思いをしている人も増えるわけですが、そういう試練の時を迎えている方々に対して自分たちに何ができるのか。悶々と考えているので、そこがしんどいところですね。
私は小西さんと同じ関西学院大学出身なのですが、スクールモットーにMastery for Service(奉仕のための練達)というものがあります。学生の時は理解できませんでしたが、今この状況の中で、誰かの役に立つ(奉仕)には練達、つまり自分の高い見識や経験や、悩み苦しむ時間が必要なのだと感じています。
今まで、コロナの第一波から第五波までは「感染者数が増えてきたから動きを止めよう」とお願いしてきましたので、やることが明確でした。しかし、今は感染者数がどんどん増えてくる一方で、社会・経済を動かしていかなければならないというフェーズに入っています。自然としんどい思いをしている人も増えるわけですが、そういう試練の時を迎えている方々に対して自分たちに何ができるのか。悶々と考えているので、そこがしんどいところですね。
私は小西さんと同じ関西学院大学出身なのですが、スクールモットーにMastery for Service(奉仕のための練達)というものがあります。学生の時は理解できませんでしたが、今この状況の中で、誰かの役に立つ(奉仕)には練達、つまり自分の高い見識や経験や、悩み苦しむ時間が必要なのだと感じています。
パンデミックを越えた後、立ち上がる気力をつくる
──何か方向性は見えてきましたか。
長内:これから正念場だと思うのが、このパンデミックを乗り越えた後に倒れている人を少なくすることです。立ち上がる気力をしっかりと持っていただけるように、再生復活の気持ちをつくる。それが私たちの役割だと思っています。
まずは子どもたちに対して、日々の幸せをちょっとでも増やしてあげたいです。今は何から何まで制限がかかってるので。最近市内の小学校4年生を対象に、日本センチュリー交響楽団が子どもたちに生の演奏を聴かせてくれたんです。プロのオーケストラも、相手が子どもだからといって演奏も服装も全く手を抜かず、そのことに対して子どもたちもしっかりと敬意を払ってきちんと見て反応していました。みんな家に帰ってプロのオーケストラからこんな幸せな時間をもらったったよって家で沢山話していたそうです。高齢者にも働いている人にも、そんな幸せな時間を増やしていきたいですね。暮らしの中でもホッと一息つけるような、小さな幸せがたくさんみつかるようにしていきたいです。
今年は「市民のみなさんに幸せを感じてもらえるような年にしたい」と、年頭にケーブルTVの取材でも言ったんですが、職員みんなとして共有し、同じ思いを持って、市民の方に接していきたい。こういった時期だから市役所は、安心・安全、あるいは保健衛生・公衆衛生という部分に仕事が特化しているんですが、市民の幸せについてもうひと捻り考えて、豊中に住んでよかったなと思っていただけるアイデアを、ボトムアップで考えていけたらいいですね。
まずは子どもたちに対して、日々の幸せをちょっとでも増やしてあげたいです。今は何から何まで制限がかかってるので。最近市内の小学校4年生を対象に、日本センチュリー交響楽団が子どもたちに生の演奏を聴かせてくれたんです。プロのオーケストラも、相手が子どもだからといって演奏も服装も全く手を抜かず、そのことに対して子どもたちもしっかりと敬意を払ってきちんと見て反応していました。みんな家に帰ってプロのオーケストラからこんな幸せな時間をもらったったよって家で沢山話していたそうです。高齢者にも働いている人にも、そんな幸せな時間を増やしていきたいですね。暮らしの中でもホッと一息つけるような、小さな幸せがたくさんみつかるようにしていきたいです。
今年は「市民のみなさんに幸せを感じてもらえるような年にしたい」と、年頭にケーブルTVの取材でも言ったんですが、職員みんなとして共有し、同じ思いを持って、市民の方に接していきたい。こういった時期だから市役所は、安心・安全、あるいは保健衛生・公衆衛生という部分に仕事が特化しているんですが、市民の幸せについてもうひと捻り考えて、豊中に住んでよかったなと思っていただけるアイデアを、ボトムアップで考えていけたらいいですね。
──今後長期的な目線で、めざしていることはありますか?
長内:はい、常に「見せる変化」を意識しています。
例えば、豊中の南部地域で言えば、しっかり公共財を投資することによって、新しい道ができたり、小中一貫校ができたりと変化が出てきました。こういうことは南部地域だけではなくて全市的に広げていかなければいけないと思いますし、変化で得られた果実は次の変化に再投資したいと思っています。
これからしっかり考えなければならないのが「未来への投資」という視点です。特に公教育の分野です。公教育は義務的経費としてコスト意識ばかりが強かったんですが、20年、30年、50年先も見据えてゆったりとお金をかけていく。そういうことが長い目で見て、豊中に大きな変化を起こすと思います。
例えば、豊中の南部地域で言えば、しっかり公共財を投資することによって、新しい道ができたり、小中一貫校ができたりと変化が出てきました。こういうことは南部地域だけではなくて全市的に広げていかなければいけないと思いますし、変化で得られた果実は次の変化に再投資したいと思っています。
これからしっかり考えなければならないのが「未来への投資」という視点です。特に公教育の分野です。公教育は義務的経費としてコスト意識ばかりが強かったんですが、20年、30年、50年先も見据えてゆったりとお金をかけていく。そういうことが長い目で見て、豊中に大きな変化を起こすと思います。
──ありがとうございました。最後に、豊中市に本社を持つ当社や当社の社員に対して、希望や期待などメッセージをいただけますか?
長内:私もプライベートで、御社の豊中少路店にお世話になっていますが、担当の田中さんにはいつもお世話になっています。おろそかになりがちな車のメンテナンスを、いつも親身になってスケジュール管理していただきまして、お陰で安心して車に乗ることができています。ユーザーとして安心できるし、何かあったときにはすぐに相談できるというのは嬉しいです。家から歩いて通える店で助かっていますし、もう少し時間に余裕ができたら、車の点検をしていただいている間に、豊中少路店によく出店しているキッチンカーで食事をできたらいいな、と思っています(笑)
また、御社は地域振興券の取り組みなどでいつも地域のことを考えて取り組みをされています。身近なカーディーラーさんが地域の商店をサポートしておられるのが嬉しくて楽しく、私も誇らしく思っています。今後、本市と包括連携協定も結んでいただけると聞いています。引き続きこのような取り組みを続けてください。
また、御社は地域振興券の取り組みなどでいつも地域のことを考えて取り組みをされています。身近なカーディーラーさんが地域の商店をサポートしておられるのが嬉しくて楽しく、私も誇らしく思っています。今後、本市と包括連携協定も結んでいただけると聞いています。引き続きこのような取り組みを続けてください。
──本日は貴重なお時間ありがとうございました。当社のお客様としても、今後ともよろしくお願い致します。
豊中市役所
〒561-8501 大阪府豊中市中桜塚3丁目1−1
聞き手:小西敏仁 / 撮影・構成:山本一夫(広報室)